秋葉原の風景
もう少し社会的にも落ち着いてから、なんて思っていたのだけどもついついおちゃらけた
ぶくまもしてしまったことだし、なんとなしに仕事の手のつき方が悪いので吐き出してし
まった方がいいかなと思い。
先に書いておくと僕は当事者ではない。僕の周囲もニアミスの人はいたが（30分前まで
いた、とか）、当事者にはならなかった。幸いなことだ。幸いと言いつつもショックを
受けたことに変わりはないし、やはり何かいたたまれない気持ちの話をしていた。
僕は疲れがたまっていたのか昼過ぎまで寝倒してしまっていたのでそういう友人たちの
話から事情を知った。週末に訪れることは諸々の事情でめったにないが、それでも立ち
寄る機会がないわけではないし、暇だったらホコテンをぼけっと眺めているのもいい
と思ってもいた。人付き合いが下手だし世間話も出来たもんではないが雑踏の中で人々
の表情や声を聞いているのはなんとなく面白いものだ。そんなところにとんでもない
非日常が起きた。可能性で考えれば結構多くの人が居合わせたかもしれない、巻き込ま
れたかもしれない。想像は妄想となりもやもやと広がっていく。
秋葉原の中央通りというのは僕にとって比較的身近な場所でもある。平日の通勤ルート
なのだ。事件の直後ということもあり、しばらくは別の意味で騒々しい感じになるだ
ろうと思っていた。
マスコミや警察関係と思しき車や人がそこかしこに見える。
朝。献花台があった。たまにフラッシュが光っていたように見える。
帰りに気持ちだけでも拝みに行こうかと思ってみたらまだ人だかりが
出来ていた。一般人というよりはおそらくは報道関係ではないかと思った。
22時前とかそのくらいの時間である。秋葉にこれ以外で用のある人がいつまでも残る
ような時間でもないと思うし、まあ仕事なんだろうけどなんだかなぁと思いつつ帰路
についた。
今朝。取材クルーと思われるカメラとマイクを持ったグループがメイド服の女の子に
インタビューしていた。内容までは聞こえないがどんな風に使われるのやら。
献花台。相変わらずの感じ。"KEEP OUT"のテープが眩しいのは日光のせいだけでは
ないだろう。献花台の通りの方々に緑ナンバーの黒い車が何台も止まっていた。
中で休憩しているようだった。黒い車の合間に大きなバンが止まっている。どでかい
アンテナが仕事関係をアピールしているようだ。
みながみな悲しみに暮れていろというわけではないが、どんな事件でも日常が押し流す
という感じはこんなものかもしれない。仕事は仕事でしていかなければならないし、
ご飯してお風呂して寝るのも大事だ。だからきっと明日もドンキ前は同じ行列が出来て
いるだろう。
容疑者…というか現行犯だし容疑者もくそもないと思うが、掲示板の書き込みとやらを
見ていると胸糞が悪くなる。あそこまで時系列にあわせて淡々と事を進めていたのなら
責任問題とかいう話ではないように感じた。
秋葉原という街自体に何か問題を感じることも少しはあるかもしれない。ちょっと前の
露出して逮捕とかのあれとか。だが基本的にこの事件の犯人で何かカテゴライズするの
は違うんじゃないだろうか。またゲームのせいかとか2次元がどうとか言い出すのだと
したら思考停止すぎるように思う。
実際に利用者がやめた方がいいと言うのであればホコテンは中止でもいいだろうが、
こんなレアケースのために潰されるのは何か許せないものを感じる。
街の姿勢はそのままでよいのではないか。その上で万世橋警察でホコテンでの対処なり
を考慮するのは必要なシミュレーションかもしれない。
個別には問題ない行為が全部組み合わさったときに犯罪につながったということを、
僕らはどう考えるべきだろう。ナイフを買う行為自体はそれ自体で犯罪を問われること
にはならない。引越しのためという嘘はあれど車を借りる行為も同じだ。掲示板に書き
込むことで文句言われるなんてありえない。
でもそれが全部組み合わさり、ある人物が実行したらこんな事件になってしまった。
人の意思を読み取れたら防げたのだろうか。
そんなことされたら世の中終わりな気もする。
つまるところ、こうすればよい、と結論を出せる問題ではないことだけが残った。
そして日常は流れていく。事実は直接の被害にあった人以外には大半が押し流され、
押し流される前に僕らはわずかばかりの免罪符とともにこう言うのだろう。
亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げます。
